【手紙が題材③】東野圭吾著『ナミヤ雑貨店の奇蹟』

こんにちは、レタコミュ!18PLUSです。

本日は、手紙が題材シリーズ第3弾として、人気作家東野圭吾著『ナミヤ雑貨店の奇蹟』をご紹介したいと思います。

映画化された本作、「奇蹟」というだけあってありえないことが起こるのですが、さすが東野圭吾、ファンタジーが苦手な私でもぐいぐい惹き込まれて一気に読んでしまいました。

ここでは「レタコミュ!18PLUS」らしく、「手紙」に焦点を当てていますので、ご了承ください…。


まずはあらすじをご紹介。

悪事を働いた3人が逃げ込んだ古い家。そこはかつて悩み相談を請け負っていた雑貨店だった。廃業しているはずの店内に、突然シャッターの郵便口から悩み相談の手紙が落ちてきた。時空を超えて過去から投函されたのか?3人は戸惑いながらも当時の店主・浪矢雄治に代わって返事を書くが…。次第に明らかになる雑貨店の秘密と、ある児童養護施設との関係。悩める人々を救ってきた雑貨店は、最後に再び奇蹟を起こせるか!?

Amazonより

最初は、どういうこと?なんでこんなことが起こるんだろう…と、ファンタジーというよりはミステリーみたいな感覚で話が進んでいきます。

ネットもない時代、「手紙での悩み相談」がすべての始まり。

シャッターの投函口(イメージですw)



時代は1980年頃。まだネットは夢の世界の話だった頃です。最初はナミヤがナヤミと響きが似てることから始まったナミヤ雑貨店の悩み相談。最初は店の入り口に張り出していましたが、徐々に真剣味を帯びてきた相談が増えてきたため、手紙をシャッターの投函口へ入れてもらい、返答を裏口の牛乳箱へ入れておくことにします。

そして、その33年後(なぜ33年後なのかは読んでのお楽しみです)、ナミヤ雑貨店の廃屋に忍び込んだとある3人は、悩みが書かれた手紙を目にします。最初はまさかその手紙が時空を超えて届いたとは思わなかった3人は、とりあえず悩んでいる人の力になれればという思いで、返事を書きます。そして徐々にその手紙が過去から届いていることに気付き始めます。

なぜ時空を超えて、過去の手紙が今届くのか。3人も頭を抱えます。でもそんなことを考えても分かるわけもなく、目の前にある悩みに対して、彼らも彼らなりに一生懸命考えて返事を書きます。最初は「手紙の出だしって、どんなふうに書くんだっけ?」と言いながらたどたどしく書き始めた手紙も、後半は熱意をもった文章へ変わっていきます。

最初、3人のリーダー格?の敦也は返事を書くことに反対していましたが、幸平の

「でもさあ、何か書いてやるだけでも、ずいぶん違うと思うんだよね。(中略)大したアドバイスはできなくても、あなたの悩みはよくわかりました、がんばってくださいって答えてやったらきっと少しは気持ちが楽になるんじゃないかな」

第一章p26

というセリフをきっかけに手紙に返事を書くことになる3人。このことからもこの3人が根っからの悪い子たちじゃないんだろうなあと思えてきます(事実そうなんですが)。


手紙の向こうの人生に惹き込まれていく…

第二章から、ナミヤ雑貨店へ相談してきた人のエピソードになり、その人たちが彼らの手紙を受け取ってどのように考えて、そして行動していくのかを読んでいきます。

未来からの手紙でもある3人が書いた手紙は、確信めいたことを書かれ、訝しげに思いながらもその手紙はその人たちの人生を大きく動かしていきます。
彼らの悩みはあまり共感できるような境遇のものではありませんが、彼らの劇的な人生にドキドキしつつも、自分だったらどうするか、自分だったらどんな決断をするのか、ナミヤ雑貨店からの手紙(3人が書いたものですが)に対して自分ならどう思うのか。
手紙の向こう側を見ることで相談してきた人物の真相を深く知り、より近くに感じてきます。そして徐々に繋がりや奇蹟に近づいていくと、もうあとは一気、章が進むごとにぐいぐいと惹き込まれていきます。


何度も読み返せる手紙は、「奇蹟」を起こすこともある、かも。

手紙は書いて読み手に渡ってしまえば、その内容は読み手の解釈ひとつで色々な意味に変わっていきます。それは手紙に限らないことですが、何度も読み返せる手紙は読み手のその時の心情や状況によって解釈が変わり、突き放すように見えたり、逆の意味にとらえたり、その人がその時欲しい答えが書いてあるかのように解釈されていくものなのかもしれません。

第三章では、悩み相談を始めたナミヤ氏の考えや思いに触れていくことになるのですが、そこでナミヤ氏のこんな言葉があります。

「大事なことは、本人の心がけだ。わしの回答で誰かを不幸にしたんじゃないかと悩んでいたが、考えてみたら滑稽な話だ。わしのような平凡な爺さんの回答に、人の人生を左右する力なんぞあるわけがない。(以下略)」そんなことをいいながらも顔は嬉しそうだった。

p,190

悩みを相談した時点で答えは出ているというけれど、悩みを打ち明けた人にとって、誠実に真摯に答えたナミヤ氏からの手紙は、その答えが正しかったという確証はどこにもないけれど、そんなことはどうでもよくて、その葛藤した心に寄り添い、力になり、後押ししてくれて、ずっとそばにいてくれる親友のような存在になってくれたのだと思います。
話した言葉は忘れてしまうけれど、何度も反芻して読める手紙にはそういうパワーがあり、時空を超えてまで力を与え続け、それこそ「奇蹟」のようなことを起こすことができるのかもしれません。


さすが東野圭吾氏、最後に素晴らしい手紙を送ってくれました。

そして、最後には、ナミヤ雑貨店へ相談した人たちのエピソードが、徐々に繋がっていき見事に収束していくのは、さすが東野圭吾!裏切りません!
そして最終ページのナミヤ氏からの最後の手紙への回答は、人生の節目に何度も読み返したくなるものでした。
こんな奇蹟は起きないんだろうけれど、この手紙は時空を超えて、きっと私の心に力を与えてくれる存在になる。そんなことを思った作品でした。